ボクをつくる100のコトバ

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ぼく100その1 『豊玉のバスケットはラン&ガンや ラン&ガンで優勝するんじゃ』~スラムダンク~

ぼく100その1

『豊玉のバスケットはラン&ガンや ラン&ガンで優勝するんじゃ』

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                          スラムダンク第23巻 

 

 

念、矜持、拘泥、憤怒、激高、葛藤―。

 

その言葉にどこか似ていて、どれとも異なるもの。

その言葉の狭間を漂うも、決して交わらぬもの。

 

 

なぜなら、これは心の叫びだから。

後付けの言葉では決して取り繕えない、心の叫びだから。

 

 

大歓声がまだ耳から離れない、束の間の静寂が時を弄ぶ、豊玉のロッカールム。

 

ひどく静かに、愚直なほど真っ直ぐに響くこの言葉は、一体どこに向かっているのか。

 

 

踏みつぶすべき敵か、憎む新コーチか、恩師が辞めなければならない現実か、ふがいない自分自身か。

 

 

けたたましく吠える、1匹の狂犬にもそれは分からない。いや、分かろうとすらしていない。

 

ただ、静寂に鮮明に浮かび上がるのは自分自身の心の最も純粋な部分。

 

負けたくない―。

熱狂が支配するコートの中では、それがただ1つ、絶対の真実である。

 

 

 

感想

記念すべき第1回は永遠の名作、「スラムダンク」から。

 

全国大会第1戦、湘北VS.豊玉のハーフタイム、大阪ナンバーワンスコアラーの岸本の放つ一言です。数々の名言がひしめく本作ですが、このセリフは僕の最も大好きな1つです。

 

 

青臭いと一笑に付すことは簡単なのだけど、なぜだか耳にこびり付いて離れない。咀嚼するたびになぜだか思い出されるのは通り過ぎた思い出とそれを思い出と呼ぶことと決めたいつの日の自分。

 

彼がこれほどまでにこだわり続けたラン&ガンとは単なる一戦術ではなく、師との絆、仲間とひたむきにボールを追った瞬間、バスケットが好きだという気持ち全てだったのでしょう。

 

だからこそ、それを否定されることは我慢ならなかった。

 

 

彼が本当に嫌ったのは新コーチそのものではなく、それに迎合する自分。戦術とか環境の変化ではなく、ラン&ガンを、バスケットを好きだという気持ちを忘れるということ。

 

ラン&ガンで勝利することが彼自身の、チームのアイデンティティそのものだった。

 

 

 

悪鬼のように描かれる彼の心は誰よりも純粋で、誰よりも勝利を欲していた。

 

 

 

結果、彼らは敗北します。

 

 

でも、僕は彼らがラン&ガンに固執し続けたことが愚かなこととはどうしても思えません。

それどころか、とても羨ましく感じます。

 

 

大人になって、いろいろな知恵を身につけたつもりになって、変化に柔軟に対応していくことがスタンダートだと疑いようもなしになっていくと………、忘れるんですよ。

 

自分がこだわっていたこと、譲れなかったこと、大切にしていたこと。

 

それを共有していた仲間、応援してくれた人、どうしても分かって欲しかった人。

 

 

信念という、ぶれないものがあるからこそ、自己っていう存在を、自分が進んでいる方向を確認できるんだ。それが他者のそれとぶつかり合ってアウフヘーベンして、新しいものが生まれるんだ。

 

 

青春を過ごしていた頃は、わざわざ言葉にしなくても、疑いもしなかったこと。

 

 

他の人はどう変わろうが、俺は変わらないよって心の中で何度も叫び続けていたこと。

 

 

当たり前だったことを忘れたのはいつなんでしょうか。

気付いてるけど、見ないふりするようになったのはいつからなんでしょうか。

 

 

 

変化がこれほどまでにもてはやされる時代は今までなかったかもしれません。曲解すれば、変化に対応できぬものは愚か者の図式が成り立ってしまっている現在、変化に順応しようとするあまり、自分の根幹にあるものからどんどん遠ざかっていくことに何の疑問も持たなくなったことに、少しだけ淋しさと違和感を覚えます。

 

 

みなさんにとっての「ラン&ガン」とはなんでしょうか。

 

 

 

変化が尊ばれる時代のアンチ・テーゼ。

僕たちが忘れかけていることを思い出させてくれる、最も愚直で最も純粋な一言です。